当ブログをご覧いただきありがとうございます。
How to order①では元生地屋の私がスーツやジャケット、その他アイテムをオーダーする際に、重要なファクターである生地選びについて、これを意識するとご希望のものがお仕立ていただけるのではないかという点を、お客様のご参考になるように選び方や、推奨ポイント等を私なりの言葉でお伝えさせていただきます。
まず初めに、オーダーをする内容を決める際の正解なんてものは無く、それこそ色々な流れで決められていくと思います。仕立てるアイテムをイメージして、写真や資料などを参考に内容を具体的にしていく方もいれば、色々な生地を眺めながら想像を膨らませて、具体的なアイテムに落とし込んでいく方もいらっしゃると思います。冒頭にも述べましたが、それこそ十人十色の方法でお仕立てするアイテムを決められるでしょう。
ただ、仕立て上げる生地はそれこそ多岐にわたり、例えば”ネイビー”のスーツを仕立てると決まったとしましょう。一概に”ネイビー”といっても青に近い紺や黒に近い紺、赤っぽい色や緑がかった色、その他にも素材、重さ、生地感、織り方や原毛の太さ等によって大きく変わってくるため、それこそ”ネイビー”だけでも無数に存在します。
その中で私の経験上、意外と盲点でありなおかつ重要な部分、“目付け”と“織り方”、ここに①はフォーカスしていきたいと思います。
是非お時間ございます際にご一読いただき、今後のオーダーに向けてご参考にしていただければと存じます。
“目付け(生地の重さのこと)”
まずは“目付け”、生地の重さについてお伝えさせていただきます。目付けは”●●●gm”や”●●●gms”等で表記されます。
上2つの写真ですと、赤いバンチには”240/250gm”と、その下の写真、生地に白いシールで”320gms”と表記されていますね。
細かい部分は私たちオーダースーツ専門店側が把握していれば良いのでご接客の際にお伝えさせていただきますが、是非覚えておいてほしいのは、生地の重さによって“ご着用出来る季節が変わる”という点です。
目付けの算出方法をお伝えしておくと、“生地幅 × 1m”での重さを基準としています。だいたいの生地はダブル幅(約150cm)です。
目付けによっての着用推奨シーズンを下記に記載します。色々な同業者様や生地屋様が各社の基準をホームページなどで明記しておりますが、概ね下記で把握しておいていただければ問題ございません。
~200gms前半 / 春夏用
200gms中盤 / 通年用
200gms後半~ / 秋冬用
先ほど概ねとお伝えしましたが、体感温度や得手不得手は人それぞれで、目付け240gmsでも暑いと感じる人もいらっしゃれば、逆に280gmsでも寒いと感じる方もいらっしゃいます。ですので、生地を選ぶ際のあくまで目安として把握しておいてください。
凄く気に入った生地があって、例えばそれを冬に着用したいスーツにお仕立てするとした際に、その生地が220gmsであればまず快適に着用することは出来ません。逆に春夏に着用するスーツに380gmsの生地を使用したら、間違いなく汗だくですね。そういった事を防ぐ大前提としての、あくまでも目安としてご活用いただければと思います。
それからもう1点、200gms中盤を通年用と記載しましたが、これは1年通して快適にご着用できるというわけではございません。例えば250gmsのスーツをご着用したとして、間違いなく夏は暑く、冬は寒いです。裏地の仕様によって更にそれは変わってきます。
ですので何度もお伝えしてしまい申し訳ございませんが、あくまでも目安として把握しておいていただけると幸いです。
“生地の織り(織物の組織)”
さて続きまして生地の織りについてご説明させていただきます。織物というのは基本的に、“平織り””綾織り””朱子織り”の3種類の組織からできていて、変わったように見えるものもこの3種類の内のあくまで変化形となります。
こちらも細かいことは問題ないのですが、是非覚えておいてほしいことは“平織り”と“綾織り”についてと、その違いです。先ほどの目付けと同じくらい、オーダースーツやその他オーダーアイテムをお仕立ていただく際の重要な要素になります。
こちらも先に着用推奨シーズンをご案内させていただきますので、下記をご参考ください。
平織り / 春夏用
綾織り / 秋冬用
上記の写真左側が“平織り”、右側が“綾織り”でございます。下記に大まかな特徴をご説明させていただきます。
“平織り”
経糸、緯糸ともに1本ずつ交互に織り上がっている組織。最もしっかりした織り方でハリコシが強く出ますので、特に夏素材に使用されることが多い組織です。以前当ブログでご紹介いたしました【HARRISONS “FRONTIER”】や【FOX BROTERS “FOX AIR”】も平織の組織になりますので、是非合わせてご一読いただければ幸いです。
わかりやすくイメージしていただくなら“網戸”を思い浮かべていただければと思います。網戸って奥側も見通せますし、風通しも良いですよね?平織りは交差回数が多く糸と糸が離れる(厳密には離れようとする)ため隙間が生まれます。その隙間が通気性の良さに繋がり、結果として春夏に適した織り方になるのです。
“綾織り”
綾織りは平織に比べバラエティーに富むのですが、最も基本となるのが2/2の綾織りです。経糸、緯糸が2本ずつ飛んで2本ずつ潜る組織で、平織に比べ交差回数が少ないため、隣り合う複数の糸が接近している(厳密には接近しようとする)為、隙間の少ない織物を作ることが出来ます。その隙間の少なさが風通しを防ぐため、秋冬素材に適している織り方になります。
生地の特徴としては、表面に斜めの畝上の筋(写真右側参照)が入って見えるのが特徴です。また、交差回数が少ないことで肌触りが良くなり、生地の光沢感やドレープ感がきれいに現れます。光って見える生地はだいたい綾織りですね。
ただ、目付けと同様に生地の織りも様々で、後日当ブログでもアップする予定ですが、例えば目付け350gmsの平織りや目付け240gmsの綾織り等もありますし、打ち込み(生地の密度)が変われば表情や特徴も全く変わってきますので、こちらもあくまで生地を選ぶ際の目安として把握いただければと思います。
今回はHow to order①“目付け”と“生地の織り”について書かせていただきました。この二つを組み合わせてご検討いただければ、生地選択がもっと楽しくなると思いますよ!是非オーダースーツやその他オーダーアイテムをご検討いただく際のご参考にしていただければ幸いです。お目当ての生地を眺め、触れながら、どんなデザインで仕立てるか妄想を膨らませたり、実際に着用するイメージを思い浮かべたりする過程こそが、オーダーの楽しさであり醍醐味ではないかと思います。
そのお手伝いが出来ればと考えておりますので、オーダースーツやその他オーダーアイテム、生地やモデルに関するご質問やご相談がございましたら、当ホームページのCONTACTからお問い合わせ、もしくは直接お電話にてお気軽にご連絡くださいませ。